血管炎
rheumatism血管炎ってなに?
血管炎とは、血管に炎症を生じる病気を広くまとめて表した病名です。血管は肺で取り込んだ酸素を全身の臓器に送り(動脈)、そこで産生された二酸化炭素を全身から肺に戻す(静脈)ため、全身の臓器に張り巡らされています。つまり、全身のほぼ全ての臓器に血管がありますので、血管炎では様々な臓器の症状が出ることになります。
炎症の生じる血管の大きさによって、大型血管炎、中型血管炎、小型血管炎などと分類されており、それぞれの病気の特徴によって細かい病名が決められています。また、全身の様々な血管に炎症を生じる全身性血管炎と、一つの臓器のみに炎症を生じる単一臓器血管炎といった分類方法や、明らかな原因のない原発性血管炎と、感染症や薬剤など明らかな原因による二次性血管炎といった分類方法などがあります。
医師は、患者さんの様々な症状や検査異常から丁寧に病気を診断していくことになります。
こんな時もしかしたら血管炎?
様々な臓器に血管の炎症が起きますので、血管炎の症状も様々です。代表的には、長く続く発熱、倦怠感、体重減少、筋肉痛、関節痛などの全身症状が見られることが多いです。その他の症状は炎症の生じる臓器にもよりますが、頭痛、視力低下やかすみ、難聴、鼻血、空咳、血痰、息切れ、胸痛、吐き気、腹痛、手足のしびれ、腕のだるさ、足のむくみ、赤紫色の発疹、じんましん、尿の泡立ちや血尿など様々です。
これらの症状がある時から急激に出現して、それが持続することが血管炎の特徴です。ですので、風邪かなと思ってもなかなか熱が引かなかったり、それ以外の様々な症状が出てきたりした場合には、病院に受診して検査を受けるとよいでしょう。
検査について
まずは丁寧な問診と身体診察で血管炎らしさがあるかどうかを見極めます。血液検査ではCRPや赤沈といった炎症反応の上昇を確認します。同時に、腎臓や肺などの臓器の異常があるかどうかを確認します。また、病気によってはANCA(アンカ)という特殊な自己抗体が検出されます。尿検査では蛋白や潜血などの有無を確認します。画像検査では、X線検査やCT検査、MRI検査などにより太い血管や各種臓器に炎症が出ているかどうかを確認します。大型血管炎ではPET-CT検査で炎症が起きている血管を「見える化」することもあります。可能であれば、組織の一部をメスや針で採取して、顕微鏡で血管の炎症を確認します。これらの検査はクリニックでできるものもありますが、大病院ではないと難しいものもありますので、近隣の大学病院・総合病院と連携しながら検査を進めていきます。
治療について
感染症や薬剤など原因のはっきりとした血管炎の場合にはその治療を行います。そうではない場合、一部の血管炎を除いてステロイドを含む免疫抑制療法が必要になります。多くは大量ステロイド療法が必要であり、入院で治療することが一般的です。当院で血管炎の診断が付いた場合、あるいは診断が確定する前であっても早急に検査と治療を進めていくことが必要な場合には、近隣の大学病院や総合病院での加療のため紹介させて頂くことになります。
なお、血管炎の治療は従来治療のステロイド療法や古典的な免疫抑制薬だけではなく、多くの新規治療が開発されている、発展の目覚ましい分野です。血管炎の種類によってはB細胞という免疫細胞だけを抑制する点滴薬や好中球という炎症細胞の活性化を抑える内服薬が使用できるようになったり、好酸球というアレルギーに関わる細胞を抑える注射薬も2種類使用できるようになったりしています。IL-6という炎症物質のシグナルを抑える注射薬が使用されるようになった血管炎もあります。これらの新規治療薬を組み合わせることにより、従来よりもステロイド投与量を減らすことができ、結果としてステロイドの副作用を減らすことができるようになっています。10年前とは全く違った治療が可能となっているのが血管炎の領域ですので、血管炎に十分な理解のある医療機関で治療を受けることが望まれます。
当院では、まずはしっかりと診断して、大学病院や総合病院で十分な治療を受けられるようお手伝いさせて頂きます。その後、病状が落ち着いたら当院の外来で治療を続けることも可能です。迷われた際には、ぜひ当院にご相談いただけばと思います。