リウマチ治療情報コラム

コロナ抗体検査について千葉大学学長徳久先生からいただいたコメント


院長がメールでご質問させていただいたコロナ抗体検査の意味について徳久先生からお返事いただいたメールです。転載禁止でお願いします。

東 孝典先生

さっそくのご連絡をありがとうございます。抗体価の測定に意味があるかどうかという質問ですが、長年免疫学を研究したものとしての私見を記載してみますので、参考にされてください。

1)感染症は、感染した始めの数日が非常に大切です。この段階でストレスをかけたりして免疫力を低下させると、ウイルスの増殖が免疫力(免疫細胞の増殖)よりも勝って発病することになります。ですから、昔から風邪はひき始めが肝心というように、ひいたと思ったらすぐに安静にすることが大切です。大学では、感染したら体の全てのエネルギーを免疫に向けるようにと教えています。

2)新型コロナに対する抗体が、IgMでもIgGでもすでに体内にあることがわかれば、一度感染を受けたことになり、コロナに特異的な免疫細胞がすでに増えていることになります。そのため、次にコロナウイルスに感染したときには、いち早く免疫力が活性化するので、1)で記載した感染初期にウイルスよりも免疫力が勝ることになり、発病を免れるか、軽度で経過することになります。

3)始めの感染時に、高熱を発するような強い症状が出た時には、強い免疫力が必要となり体の免疫細胞を強力に動員するため、作られたIgG抗体はその後病状が収まっても長く作られ続け、免疫記憶も強く残ります。逆に、今回のコロナ感染では無症状で済む方もいるようですので、そのような方の血中IgMやIgG抗体価は低いので、検査システムの感度次第では陰性にでることも考えられます。でも抗体検査で陽性にでれば、今回のコロナウイルスに関しては免疫を獲得していることになり、もはやあまりコロナ感染は怖くないと言えると思います。

追記 近々に、国や地方自治体は抗体検査を1万人規模で行うことが報道されていますので、集団免疫の可能性も含めて明らかになって来ると思います。個人でこの検査を受ける意味合いは、安心感にあると思います。お役に立てれば幸いです。

国立大学法人千葉大学長 徳久剛史